先日(2023年10月24日)統計検定準1級のCBT試験に3回目の受験で合格しました。
勉強法や準1級を受けてみた諸々の感想などについては下の記事に書きました。
この記事では、統計検定準1級の合格に役立った本や、買ってみたけど統計検定にはあまり向いてなかった本など、できる限り詳しく解説していこうと思います。
一部マニアックな本も紹介します。
私は食費を削ってでも本を買いたい本収集家なので、統計の本だけでもざっと30冊以上持っています。
積読も多いので、本ごとにどの程度読んだ上で書評を書いているのかも示したいと思います。
基本的に私が読み込んだ本は統計検定の勉強に向いていたり、検定に限らず統計の理解がしやすかった本になります。(ただ、あくまで主観)
本の紹介に加えて、★が付いた見出しの項目は本の紹介ではなく、統計検定に関するちょっとしたことをついでに書こうと思います。
★複数の本を読むことのススメ
本を紹介していく前に少し時間を取らせてください。
数学に限らないことだとは思いますが、とりあえず数学に限ると、数学的概念というものは複雑な立体のようなものだと思います。
これを1つの固定した方向からいくら眺めていても、本当の形がなかなか分からないと思います。
この複雑な立体の形を見るためには少なくとも複数の角度から眺めてみることが必要です。
1冊の本だけで数学分野の理解をするのは、まさに1つの視点だけで対象を眺めているのと近いことだと思います。
要は言いたいのは、なるべく多くの本を読んでください、ということです。
個人的には、分かりやすい本の書き方をする著者の本を追うのも良いですが、時には別の著者の本も読みましょう。
大学受験を経験した方は、多くの本に手を出すことを悪だと考えている方もいるでしょう。
しかし、この点については次のヨビノリさんの動画で本質が語られているので、ぜひ参考にしてみてください。
統計検定準1級の合格に貢献した必須の本
次の2冊は統計検定準1級の合格のためにはもはや必須なので詳しく解説しません。
「日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック」
統計学入門(赤本)
読み込み度:80%
良書と広く認められているらしく「赤本」という通称があります。(通称が付くような本はハズレが少ない)
私も良書と認めますが、統計を勉強し始めて最初に読む本では無いかな、と思います。
私は統計検定2級(準1級の前に)を受験すると決めてすぐに赤本を買って読んでみましたが、統計についてあまり知識が無い状態で読んでみても、難しくて良く分かりませんでした。
良書ですが、難易度は少し高いです。
なので、統計初心者の方は赤本を読んで、サッパリ分からなくても落ち込む必要はありません。それなりに難易度が高いので。
統計検定2級の勉強を進めていき、過去問で7、8割くらい取れるようになった頃に読むと丁度良いと思います。
それまでは他のもっと優しい本や、統計検定2級の勉強を地道に進めましょう。
マセマ確率統計
読み込み度:90%
私が統計検定合格を目指す前に統計の勉強のために読んでいた本です。
他の微積や線形代数などのマセマシリーズが読みやすかったので、統計もマセマで勉強していました。
説明は丁寧です。ただ、難解な部分もちらほらあり、そういうところは読み飛ばしました。
統計の基礎を身につけるためには非常に良いと思いますが、統計検定とは少し話題が被っておらず相性は悪いかなと思います。
マンガでわかる統計学入門
読み込み度:95%
個人的に統計を学び始めた方に最初におすすめしたい本はコレです。
マンガで数学を学ぶことを避ける人がいますが、もちろんハズレもありますが、アタリもあります。
それはマンガに限らず本全般に言えることです。
そしてこの本は個人的に大当たりだと思います。
まず絵が綺麗でモチベーションが高まります。
内容も初心者向けですが、初心者に分かりやすい語りで最終的に点推定・区間推定・仮説検定まで到達します。
マンガも良くできていてキャラクターが躓きそうな部分を言及してカバーしてくれます。
この本も他のマンガで数学を説明する本のように、マンガパートと文章パートで別れていますが、よくあるマンガは適当で文章パートがやたらと重いようなこともなく、マンガパートでも本質的な説明がされます。
統計初心者の最初の一歩におすすめです。
入門 統計学(第2版)
「入門 統計学(第2版): 検定から多変量解析・実験計画法・ベイズ統計学まで」
読み込み度:45%
統計検定2級の勉強をしている時に買った本です。
統計検定準1級の勉強の際にはあまり読みませんでしたが(積読になっていて気付かなかった)、今、目次を眺めてみるとノンパラメトリック検定、回帰分析、ロジスティック回帰分析とクラスター分析、主成分分析と因子分析、ベイズ統計学と準1級にも役立ちそうな項目が並んでいます。
2級の勉強をしている時は準1級の分野の章はあまり読んでいませんでしたが、それ以外の部分について文章量が多く丁寧に説明されており、手取り足取り説明を重ねている印象があります。
ページ数も無理やり詰め込んだような感じは全く無くゆとりをもって、多くのページを割いて丁寧な解説が目立ちます。
個人的には洗練された短い文章で解説されるより、多くの文章をもって情報量が多いほうが好みなので、私に向いていた本だと思います。そういう本が好みの方にはおすすめです。
データ解析のための統計モデリング入門
「データ解析のための統計モデリング入門――一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC (確率と情報の科学)」
読み込み度:55%
この本も通称が付いていて「緑本」と呼ばれています。
かなり読みやすい文体の本で、かなりオススメです。
この本を読んで、確率分布に対する見方が深まりました。
これまでの勉強では確率分布に離散型と連続型があると知っていても、だから何?という感じだったのですが、緑本を読んでその分類の重要性がはっきりしました。
また、確率分布が定義される範囲、例えばポアソン分布なら0以上の整数、正規分布なら-∞~∞などもかなり重要であるとわかりました。
確率分布について知識が深まった気がします。
ただ、大事なことなのですが、本としては確率分布の話に終止しているわけではなく、統計モデルの話を中心に進んでいきます。その副産物として確率分布の理解が深まるという感じです。
この本の後半では、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法、ベイズモデルなどについても解説がありますが、私はまだ読んでいません。そのあたりは統計検定準1級には必要ないかな、と判断したためです。
★統計検定準1級の多変量解析について
この記事の一番上の画像の「セクション分析」と書いてあるところに、統計検定準1級で出題される4分野が書いてあると思いますが、その4分野の1つが多変量解析です。
ワークブックでは、第16章「重回帰分析」、第17章「回帰診断法」、第18章「質的回帰」、第19章「回帰分析その他」、第22章「主成分分析」、第23章「判別分析」、第24章「クラスター分析」、第25章「因子分析・グラフィカルモデル」、第26章「その他の多変量解析手法」が多変量解析にあたると思います。(間違っていたら教えてください)
個人的には回帰分析について理解が深まると全体の底上げができると思います。
クラスター分析はややこしそうですが、問題に慣れていくと結構簡単で簡単に得点源になると思います。
主成分分析も頻出です。固有値と寄与率の関係を理解しましょう。
多変量解析がわかる
「多変量解析がわかる (ファーストブック)」
読み込み度:45%
統計検定準1級の勉強では多変量解析を勉強する必要があるのですが、ワークブックの解説で理解するのはかなり難しいです。
そこで多変量解析については、この本のような分かりやすい専門書で勉強したほうが結果的に早く必要な理解度に到達できます。
この本で解説されている統計検定準1級の多変量解析の分野は、回帰分析、主成分分析、因子分析、判別分析です。
第5章「SEM」と第7章「質的データの多変量解析」については、私は読まなくても統計検定準1級に受かったので、時間が無い方は飛ばしても良いでしょう。
マンガでわかる統計学 回帰分析編
読み込み度:70%
統計検定(2級と準1級両方)において回帰分析はかなり重要です。
ワークブックの複数の章に関係していますし、超頻出分野でもあります。
この本は単回帰分析から始めて、重回帰分析、ロジスティック回帰分析まで解説されています。
簡単な内容から始まるので初心者の方も躓きにくいと思います。後半ちょっと難しくなりますが、根気強く取り組むと理解できると思います。他の本よりは、マンガということもあり、かなり読みやすいです。
読んでいて思ったのは、回帰係数の検定やダービン・ワトソン(DW)統計量など、統計検定と親和性が高いテーマが多く含まれていることです。
絵やストーリーも悪くなく、モチベーションを維持しやすいですし、マンガと解説パートのバランスも良いです。
マンガでわかる統計学 因子分析編
読み込み度:35%
この本は、あまり読み込んでいないので詳しくは書けませんが、因子分析の雰囲気を掴むために読んだと思います。他の硬い本では数式ばかりで、因子分析のイメージが掴めなかったため・・・
軽く読んで因子分析の大まかなイメージは掴めたと思います。
また、内容としては因子分析だけでなく、その前に主成分分析も解説されており、主成分分析の解説は結構役に立ったと記憶しています。
回帰分析(新装版) (統計ライブラリー)
読み込み度:45%
マニアックな本ですが、統計検定準1級の勉強において回帰分析は重要だと思い、深掘りして勉強するために買った本です。
難易度は高く、細かくほとんどの主張に証明が付いており、レイアウトが詰まっていてちょっとだけ読みづらいです。私は下の画像のように、どこまでが1主張なのか赤ペンで区切って読みました。
読み込み度45%と書いたように頭から半分くらいのページまで読みましたが、回帰分析の理解は深まったと思います。
ワークブックで回帰分析を学んでいると、線形代数(行列)の文脈で理解する必要に迫られると思います。最初は意味不明で、ワークブックをいくら読んでも理解が難しいと思います。この本は回帰分析を線形代数の文脈で噛み砕いて説明されており、ワークブックよりは幾分詳しい解説がなされています。
第2章でベクトルと行列が解説されるのですが、大学で勉強する線形代数のうち、統計に必要な部分についてうまくまとまっています。あんまり一般的な線形代数というわけではなく、統計に特化したより具体的な線形代数の知識が解説されています。結構役に立ちました。
★統計検定準1級の時系列解析について
ワークブック第27章の時系列解析は超頻出分野です。
自己相関係数の図と偏自己相関係数の図をちゃんと区別して理解しましょう。
ダービン・ワトソン検定は理解できていると良いでしょう。
経済・ファイナンスデータの計量時系列分析
「経済・ファイナンスデータの計量時系列分析 (統計ライブラリー)」
読み込み度:30%
頭から30%くらいしか読んでいませんが、良書でした。
30%くらいしか読み込んでいない理由は単純に、それ以降が統計検定準1級の時系列解析の範囲外の内容だったからです。
もちろんワークブックより遥かに詳しく書かれており、文章量多く丁寧に解説されているので分かりやすいです。
【追記】マルコフ連鎖・確率過程
2024/06/11 追記
最近、統計検定準1級の内容について復習しています。
マルコフ連鎖・確率過程(ワークブック14・15章の内容)について、分かりやすい本が見つかったので紹介します。
「入門確率過程」
「まえがき」に「高校までに学んだ数学の知識をベースに読み始められるように工夫した」と書いてある通り、高校までの数学の知識があれば読み進められます。
統計検定準1級に合格するためには必ずしも必要の無い事項も書かれていますが、そこはうまく取捨選択してください。
全体としてかなり読みやすく書かれています。
いくつか確率過程の本を読みましたが、数学的に高度な話(測度論?)に踏み込んでしまうものが多く、この本は測度論には踏み込まないので気軽に読むことができます。測度論に踏み込まずに読める確率過程の本としては一番読みやすいと思います。
最後に
本当はベイズについても本を紹介するつもりでしたが、文量が多くなりすぎ断念しました。
ベイズについては冒頭紹介したもう一つの記事にて良い本を紹介しています。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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